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要約 :
インド人が集住する東京都江戸川区において,地産の「メティ」を普及させる活動に取り組むボランティア団体「えどがわメティ普及会」の活動に着目し,マジョリティ側である日本人が在日外国人の「コンフォート・フード」食材を積極的に活用するという,多文化共生の新しい試みについて知見を提供するものである。本研究では,普及会,江戸川区内のインド料理等飲食店,「えどがわメティ」取扱事業者の三者を調査した。その結果,普及会は,単に食材としての「メティ」の珍しさや機能面に着目するのではなく,発足当初から集住インド人の存在が念頭にあり,多文化共生を意識して活動を進めてきたことがわかった。加えて,もともと小松菜を特産品とする江戸川区の環境があいまって,短期間で江戸川区内での生産・販売を達成し得た。一方,江戸川区内のインド料理等飲食店においては,「えどがわメティ」の存在を知らない飲食店が多数を占める一方,「手に入るなら使いたい」と答えた店舗が75%に達し,「えどがわメティ」の生産・流通量増加や販路拡大が,江戸川区内の多文化共生に資する可能性や,ひいては観光コンテンツ化にもつながる可能性が示唆された。